一般社団法人浪江青年会議所

第46代 理事長 鈴木 貴仁

【はじめに】
 浪江青年会議所が誕生してから45年の月日が流れ、先輩諸氏が志高く運動・活動を行った歴史により青年会議所は地域に必要だと言える存在となった。
 2011年3月11日に発災した東日本大震災(以下震災)は福島県を含む東北地方沿岸部及び関東地方沿岸を含む多くの地域に甚大な被害を与えた。マグニチュード9.0という経験したことのない揺れに動揺や不安を感じながらも、これからどうしていこうかと皆感じていた矢先、東京電力福島第一原子力発電所事故による避難指示が各町村に発令された。我々の活動する標葉地域(浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村)もすべての住民が避難を強いられた。立て続けに変化する状況に我々は戸惑いながらも、愛する故郷を離れるという選択肢以外許されなかった。当たり前に存在した場所に誰もいない、誰の笑い声も聞こえない、建物に明かりが灯ることもない、そのような非現実的な風景こそがこの地域のリアルであった。
 しかし、震災から14年が経過しようとする現在、愛する故郷を想う住人をはじめ、新たに地域に想いを馳せる人、復旧・復興に尽力される人が地域に集まり、地域内では笑い声が響き、夜は少しずつ明かりが灯るようになってきた。その中でも一番大きな変化は子どもである。地域内には子どもが増え姿を見る機会が増えてきている。この地域で育っていく子どもたちは我々と同じように地域を愛してくれるだろうか。我々青年世代は子育て世代でもある。自分
たちの子ども世代に愛するに足る地域を残すために、過去を知り・現在を尊重し・未来を見据えた活動を共にしていこう。

【福島ブロック大会in浪江】
 公益社団法人日本青年会議所東北地区福島ブロック協議会最大の運動発信の場である第55回福島ブロック大会(以下ブロック大会)を今年度浪江青年会議所が主管することとなる。ブロック大会を主管するのは2009年以来16年ぶりである。この16年もの間に浪江青年会議所としても、標葉地域として多くの出来事があった。中でも大きな出来事は、2011年の震災であるが、震災で地域に人が住めなくなってからも先輩諸氏は運動・活動を行うのを止
めず歴史を紡いでこられた。震災後初めて主管するブロック大会では地域のすべてを多くの人々に伝えなくてはならない。活気あふれた過去の標葉地域、あきらめず前を向き続けてきた現在の標葉地域、そしてこれから向かおうとしている未来の標葉地域、そのすべてを伝えることこそが今我々が行わなければならないことなのではないか。
 我々が継続で行う事業の中に標葉祭りがある。標葉祭りは地域の伝統文化の継承と魅力発信を目的として行ってきたが、そのコンテンツを活用し、震災前から震災発災時、そして復興してきた道のり、そして向かう先の未来までを福島県全域の人々に伝えることができれば、ブロック大会を主管する意味があるというものだ。標葉のすべてを共に伝え広めよう。

【子どもたちが誇れる地域を】
 震災後人口がゼロになった地域はもちろん子どももゼロになってしまった。地域内に多くあった学校も休校・閉校が相次いだ。しかし、近年浪江町には浪江創成小学校・中学校、大熊町には小中一貫となった学び舎ゆめの森、葛尾村には葛尾小学校・中学校が開校し義務教育が再開されている。双葉町でも双葉町学校設置基本構想が令和6年3月に策定され義務教育学校設置に現実味がでてきている。そんな中で各町村少しずつではあるものの子どもの笑い声が戻ってきている。もちろんこの学校に通う子どもたちは震災後に生まれた子どもたちであり、新たな歴史の主役である。しかしながら、この子どもたちが大人になるころこの地域を愛せているか、この地域で働きたいと思えるか、そんな不安が大きくある。子育て世代である我々青年世代は、地域の未来のために行動をおこす力があると信じている。しかしながら、我々だけの想いで地域の未来を描いても子たちにとって誇れる地域になるだろうか。今こそ地域に住まう子どもたちと共に地域の未来を考えよう。すべては子たちが愛し誇れる地域の創造、それこそが我々にできる一番の町おこしであると信じている。共に誇れる故郷の創造を成し遂げよう。

【地域で活躍するビジネスマンの誕生】
 現在、青年会議所は全国で671の青年会議所が存在し、約24,000名のメンバーで構成されている。世界に目を向ければ100カ国以上、メンバーはおよそ14万人、OB は250万人以上という組織になっている。その組織に所属するのは、経営者や経営者の卵、自治体職員、起業家、果てには地域に想いを馳せるサラリーマンメンバーも少なくない。そんな多様なメンバーを擁する青年会議所は、地域の未来を担う人財の宝庫である。各々職種や役職、働く目的は様々であるが、我々青年世代が社会で本気で働くことで、地域の活性化に繋がり、地域が注目され、地域経済が潤う未来が待っていると確信している。まずはメンバーが秀でたビジネスマンとなるスキルを身に付け、地域の未来を担うヒーローとなろう。

【友情、協力、協調】
 現在標葉地域と呼ばれるこの地には、多くの企業・コミュニティが存在している。そのすべてが地域を愛し、地域を盛り上げるべく活躍しており可能性は無限大だ。個の力は素晴らしいのは当然だが、各々がコミュニティを活用し協力することで無限の可能性があるのではないか。我々が中心となり企業やコミュニティを繋ぐことで、より良い相乗効果が生まれ企業の成長、コミュニティの成長が助長され地域に大きなインパクトを創り出すきっかけとなりたい。さらにそのコミュニティの中で友情が育まれ新たなビジネスやコミュニティへと成長していく効果も期待される。多くの関係団体が強調し、この地域から東北、日本、そして世界へと誇れるコミュニティの集合体を創っていこう。
 そのコミュニティで友情をはぐくむ中で志を同じうするものに出会える未来がきっと待っていると信じている。まだ見ぬ仲間が青年会議所の運動・活動に共感し、共に活動出来たらどんなに嬉しいことだろうか。それが青年会議所が持つポテンシャルを更に底上げし、46 年目の歴史に大きなインパクトを起こすことになるだろう。

【さらに紡がれる姉妹の絆】
 2011年発災の東日本大震災をきっかけに、同じ震災の経験をもつ青年会議所として阪神淡路大震災に被災された西宮青年会議所と2012 年に姉妹締結を結んでから13年の時間が経過する。その歴史の中で先輩諸氏が多くの交流をして絆を紡いできた。それは世代が変わっても途切れることなく受け継がれている。距離としては594km離れているが、心の距離はいつも近くにいる。お互いの新年会をはじめ、京都会議、サマーコンファレンス、全国大会、そして納会・卒業式まで多くの交流の機会をいただきその度に新たな友情が生まれメンバー間での交流も活発化している。そして、西宮青年会議所は、2025年創立75周年を迎える。浪江青年会議所よりはるかに長い歴史を持つ西宮青年会議所だが、志は同じ仲間である。その節目を大いに祝福し更なる友情の一歩としていこう。

【先輩諸氏に敬意と感謝をもって】
 浪江青年会議所が設立され昨年度で45 周年を迎え新たな歴史の1 ページを描き始めた。浪江青年会議所の歴史が連綿と続いてきているのは、45 年の長きにわたり地域の発展に尽力してこられた先輩諸氏の力があってこそである。我々は先輩に敬意と感謝をもって活動できているだろうか。先輩に我々の活動を知り、認めてもらうことこそが最大の敬意の表現ではないだろうか。いつもどこかで我々の活動を見守り、時には叱咤激励を与えてくださる先輩諸氏の心に届く運動を展開していこう。そして、交流の場が得られる時、大きな敬意をもって感謝を伝え、これから先も現役の心のよりどころでいてもらうための関係性を築こう。

【デジタルの時代へ】
 昨今、技術の発展により世界を取り巻く環境は大きな変化が起こっている。ネット社会の発展、AI 技術の普及、新エネルギーの推進、SDGsの推進による無駄の削減、それらはほんの一部に過ぎないが、年単位で新しいものが次々と誕生し生活はより豊かに変わってきている。しかしながら時代の流れに乗り、最先端を進むのは容易いことではない。青年会議所は時代に即した団体である。コロナウイルスのパンデミックで世界が混乱する中でも我々は歩みを止めず、時代に即した最新の技術を活用し様々な運動を展開してきた。その勇猛果敢な姿はパンデミックなどの状況など関係なしにみせることができる。
 標葉地域は今や日本の最先端の地域と言って過言ではない程、日本の英知が集結してきている。その流れに恥じないよう青年会議所がネット社会の象徴であるSNSを駆使し活動を発信することは地域の枠を超え広くインパクトを与えることになると確信している。他にも会議の在り方、事業の在り方を今一度見つめなおし、リビルドし、新しい風を入れることが我々の生活を豊かにすると共に、個々の社業にも必ず活きてくるだろう。時代の波に乗り地域の未来を我々が切り開いていこう。

【政治に関心を】
 平成28 年に選挙の投票権が18 歳へ引き下げられたのは記憶に新しいが、近年選挙の投票率は全国でみても減少の一途を辿ってしまっている。選挙権の年齢が引き下がったにもかかわらず減少しているのはなぜだろうか。選挙というものは民主主義国家である日本における我々国民が政治に参加し、主権者としてその意思を政治に反映させることのできる、最も重要かつ基本的な機会である。さらに民主主義の基本である「人民の、人民による、人民のための政治」という言葉は我々と政治の関係を象徴する言葉ともいえる。国民が正当に選挙を通して自分たちの代表者を選び、その代表者によって政治が行われる日本では、選挙に参加することが地域や国を変える一歩である。しかし、選挙に参加するには、立候補者がどのようなことを考え世の中をどうしていくのかを知らないことには始まらない。政治に関心をもつ人が一人でも増えることを願い、立候補者の声を有権者に伝えることこそが我々ができる政治への関わり方ではないだろうか。

【結びに】
 一度は人口がゼロになり今まさに再起の時を迎えるこの標葉地域で我々が輝きを放つ組織となるためには地域に益をもたらす活動を展開することにほかならない。「浪江青年会議所があってよかった」そう感じてもらうことこそが我々の望みである。青年会議所の強みである若さで、パワー溢れる新しい風を起こすことが使命である。言葉で並べるのは簡単だが実現するのは困難を極める。しかし、その困難こそが組織を育て、明るい豊かな社会の創造につながると信じている。辛い時こそ笑顔を絶やさず活躍する姿は、周囲を巻き込み笑顔の連鎖が生まれ、人々の幸福に繋がるだろう。14 年前絶望を味わったこの地域は、復興道半ばではあるが確実に良い方向へ向かっている。我々が愛した標葉地域以上に愛せる地域へと変化をし続けよう。
「大丈夫、標葉地域には浪江青年会議所がある」

~笑顔の先には幸福が待っている~