理事長所信

理事長所信

東日本大震災と福島第一原子力発電所事故(以下、震災と原発事故)発生から2021年3月11日で10年の月日が経ちました。

改めまして犠牲になられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被災された方々に心から御見舞い申し上げます。また、全国各地の皆様及び世界各地の皆様からの温かなお心寄せを頂いております事、心より感謝申し上げます。

【はじめに】

震災と原発事故から10年、人々は復旧・復興へ向けて歩みを進めてきました。原発事故により飛散した放射性物質を除去する除染作業は帰還困難区域を除いて完了しており、残る帰還困難区域においても優先的に復旧・復興を進める「特定復興再生拠点区域」の約87%(2021年10月現在)で除染等工事が完了しています。除染の進捗に合わせ公共施設や医療・福祉施設等の生活インフラ等の整備も進められ、浪江町、大熊町、葛尾村では役場機能が町村内に戻っています。また、双葉町では2022年春の特定復興再生拠点区域の避難指示解除が予定されているなど、いよいよ標葉地域(浪江青年会議所の活動エリアである浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村)全体の復興が目に見えるようになってきます。

しかしながら、未だに立入が制限され、もともと住んでいた場所へ戻ることが叶わない地域が存在します。帰還困難区域の8%は特定復興再生拠点区域に認定されましたが、残り92%の地域は解除の見通しが示されていませんでした。先般ようやく政府が2020年代に希望者が帰還できるよう整備を進め、立ち入り制限を解除する方針を固めたことにより明るい兆しが見えてきました。

私たちはこれから標葉地域(浪江町・双葉町・大熊町・葛尾村)の復興の新しい課題とともに次のステップとなるこれからの10年を見つめていかなければなりません。私たちはここで生まれ、雄大な自然が織りなす四季折々の恩恵を受けるとともに伝統や文化に触れ、地域を牽引してきた先人達に支えられ成長してきました。

本来であれば私たちの子供達も同じ場所で成長していくはずだったでしょう。その子供達はそれぞれの避難先で学び成長し、標葉地域を自分のルーツだと無意識のうちに自認できる子供は決して多くはないのではないでしょうか。

それでも震災前の標葉地域を伝えつなぎ、震災を乗り越えて標葉地域が復興再生し、これからの魅力ある標葉地域を我々青年世代が次代を担う子供達に指し示していかなくてはなりません。

地域の若者である私たちが存在感を示し、地域の復興を牽引していけるよう、これまでにも増して、地域で運動を展開し、地域と共に明るい豊かな社会を築き上げ未来へと紡いでいきましょう。

【人と人を繋ぐ会員拡大】

2022年1月時点の会員数は30名となりました。震災後、会員減少の危機があったものの、近年では会員拡大に成功しており、震災前水準の会員数を維持できています。

しかしながら、30名の会員のうち、女性会員は4名(13%)、20代の会員は8名(26%)となっており、女性や若年層の活躍が推進されている現代社会の中で、より多くの女性や若年層の会員を獲得し、時代に即した組織を目指していく必要があります。女性や若年層の会員の輪を広げていくことは、組織の多様性や持続可能性を高めることにも繋がり、盤石な組織運営や多様な運動を展開していくために大きく寄与するものだと確信しています。会員拡大に成功している今だからこそ、さらに一歩踏み込んだ戦略的な会員拡大を行い、女性や若年層の参加による新しい切り口で運動を起こしていきましょう。

そして、2020年より猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症により、メンバーが一堂に集い、顔と顔を、膝と膝を突き合わせて運動を展開し、懇親を深める機会が激減しています。近年の会員拡大の成功の傍らでは、入会3年未満の会員と浪江青年会議所を支えてきたメンバーとの相互交流・相互理解が新型コロナウイルス感染症により進まず、これまでの歴史と伝統を継承していくうえでの大きな課題となっています。入会歴の浅いメンバーが青年会議所の意義を理解し、活動をしやすいよう環境づくりと、メンバー間の交流機会を創出します。そして、2018年に日本青年会議所の定款に、「ビジネスの機会」が明記された変化も捉え、会員のみならず標葉地域にかかわる方々とビジネスの機会を広げ、会員の社業と地域の発展する運動を展開していきましょう。

【過去から学び未来へ】

どんなに活動を続けたくとも40歳で卒業を迎える青年会議所のシステムは若きリーダーを次々生み出すシステムとしては非常に優れた効果を発揮しますが、ときに脈々と受け継がれた歴史や伝統が次世代に伝わらないうちに時が流れてしまうこともあると思います。浪江青年会議所も40年を超える歴史の中で幾多の試練や困難にぶつかり、その都度青年としての英知と勇気と情熱をもって歩みを進めることで自らの成長を促し、地域を牽引する存在として輝きを放ってきました。とりわけ震災と原発事故が発災した際には会を存続するか解散かという未曽有の危機を迎え、様々な葛藤や苦悩があったことでしょう。しかしながらそれを真正面から向き合い、乗り越えたからこそバトンが繋がれ、私たちが存在しています。その当事者である経験豊かな先輩方の多くがご卒業された今、震災以後に入会したメンバーが大多数を占め、入会3年未満のメンバーも過半数を超えます。いま私たちは大きな分岐点の最中にいるのではないでしょうか。自らの力で困難を乗り越えた先輩方が当時、不条理な現実とどう向き合い、何を想い、どう行動したのか、諸先輩方の力強さの源である信念や心構えを学び、自らの手で青年会議所運動を展開していくうえでメンバーそれぞれがブレない太い芯を作り上げ、自らの活動に自信を持ち「明るい豊かな社会の実現」に向けて邁進していこうではありませんか。過去から学び、未来へバトンをつなぐために。

【災害に強い社会の実現を目指して】

私たちは震災と原発事故という未曽有の大災害を経験しました。災害により生きたくても生きることができなかったたくさんの命の上に、私たちの今があるのです。また、全国、全世界からの温かいご支援に支えられ、今の生活があることを忘れてはなりません。

一方、10年という月日の経過とともに、私たちの防災・減災に対する意識は薄れてしまっています。昨今では、2019年の台風19号や2021年2月の福島県沖地震をはじめ、全国で地震や台風、洪水、土砂崩れなどの大規模災害が頻発しています。震災を経験し、多くの方々に支えられ、乗り越えてきた私たちだからこそ、日ごろの備えや地域の防災・減災意識の大切さを語り継いでいくことができると信じています。また、これらの知識は知っているだけでは何の効力も発揮しません。防災・減災の知識を身につけ行動に移すことではじめて知識を活かすことができるのです。

私たち浪江青年会議所メンバーは震災以降広域的に分散しており、災害発生時の被害が異なることが考えられます。まずは災害発生に備えたメンバー間の連絡体制を整えておくこと、また、災害が発生した際には、被害のない地域にいるメンバーが被災したメンバーやその地域等への支援を行うなど、メンバーが分散していることを活用した災害支援体制を整える必要があります。

震災と原発事故のときに私たちがいただいたご支援に感謝し、地域の防災・減災の向上という形で繋いでいきましょう。

【次世代への地方創生】

私たちの住み暮らしてきた標葉地域は、東は太平洋に面し、西には阿武隈山系が連なり、四季折々の豊かな自然環境の中で、大堀相馬焼や相馬野馬追、標葉せんだん太鼓など魅力的な伝統・文化の溢れる地域です。そして、その誇れる地域の宝は、先人たちが連綿と受け継いできたものであり、我々現役世代が先人たちから受け継ぎ、次世代にバトンをつないでいくべきものです。

震災と原発事故から10年という月日が過ぎゆく中で、地域の復興再生は着実に進んでいます。しかし、地域に帰還することができない状態が長期間継続した影響から、ふるさとを知らない子どもたちも多く、地域の未来を担う次世代へ標葉地域の宝を継承していくことが困難な情勢でもあります。先人たちからバトンを引き継いだ我々が、地域の復興を牽引し、震災前から存在した魅力と復興の中で生まれた新たな魅力とをしっかりと育み、強力に発信していきましょう。そして、地域のサスティナビリティを高め、持続可能な故郷を実現しましょう。

また、標葉地域のすべての自治体での一部避難指示が実現する中で、ふるさと復興の担い手として主体的に行動したいと考える方や団体の活動が活発化しています。そのような状況だからこそ、地域の若者である私たちが存在感を示しながら、これまでにも増して地域の方々と共に運動を展開していきましょう。一人ひとりの地域を思う気持ちと行動力が集まることで、夢と希望にみちた未来への架け橋となると信じています。

【時代に即した組織運営】

浪江青年会議所創立から現在に至るまで、諸先輩方々は常に時代に即した運動や活動を展開し、地域の為に貢献してきました。私たちは諸先輩方々の歴史あるバトンを受け継ぎ、活動を続けるためには時代に即した盤石な組織変革が必要です。育LOMを推進し、メンバー同士が互いの多様なライフステージを理解、尊重し、組織としても子育て世代等のメンバーが活躍しやすいメリハリのある活動環境の構築を行います。そして誰でも活躍できる浪江青年会議所を構築し、多様な価値観が反映され「家族・会社・地域」の為の価値ある運動を効率的かつ効果的に運営する環境整備を行います。

広報活動では日々進化していく情報発信方法を用私たちの運動や活動を伝播してきました。更なる私たちの活動を強化発信し、諸先輩方々の歴史ある事業をHPに掲載し、組織のPRを図る為、広報活動に力を入れます。地域を巻き込める時代に即した情報発信を行い人々の共感を得ることで地域活性化につなげます。また受け取る側の思いが伝わる広報を模索し、一人でも多くの地域住民に私たちの運動や活動を伝播していきましょう。

【姉妹締結10周年】

2012年、一般社団法人西宮青年会議所と国内姉妹締結を結び本年で10周年を迎えます。10年という年月の中で2012年からお互いの地域を行き来し、多くの交流とたくさんの絆が紡がれてきました。しかしながら、年月の経過とともに、多くの方々が卒業され、数年後には姉妹締結当時を知る会員がいなくなります。また、一昨年前より新型コロナウイルス感染症の影響により、実際にお互いの地域を行き来することが難しい環境の中で、入会歴の浅い会員にとっては、お互いに顔の見える関係性を作ることが困難な状況でもありました。

10年という大きな節目の年にあたり、温故知新の精神で、姉妹締結当時を振り返り、これまで紡がれてきた友情と歴史を会員一人ひとりがしっかりと自覚するべきです。そして、世代交代を迎える中で、これまでお互いの友好関係を紡いでこられた先輩諸兄への感謝の気持ちと10年の来し方に思いを馳せながら、新たな姉妹締結の第一歩を踏み出しましょう。

【結びに】

私たちは震災と原発事故が起こり、先の見えない暗闇から10年という月日の流れる中で、まだ復興の最中ではありますが、少しずつ明るい標葉地域の再生へ日々歩み進んでいます。そして日本では2022年に猛威に振るった新型コロナウイルス感染症との闘いを乗り越えようとしています。日々時間が過ぎ行く中で、災難は不動のままではありません。必ずや状況は前へ進み困難を乗り越えていきます。これから先も予想もできない困難がいつ襲ってくるかわかりません。浪江青年会議所メンバーはどんな困難な状況でも時代の流れを敏感に捉え、経験と教訓を活かし、これからの時代に求められる力を育んでまいります。その経験や力が浪江青年会議所を強化し、標葉地域の未来が明るい豊かな地域へと実現するよう、そして希望に満ち溢れた未来の子供たちの為に、私たち青年が一丸となって率先し、邁進してまいります。

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