理事長所信



第42代理事長 蒲生 紘司

2021年度スローガン
Toughness!!
~困難にも屈しないレジリエンスをまとおう~

理事長所信

【はじめに】

私たちの生活が一変した日から10年が経過した。2011年3月11日の東日本大震災その翌日に起きた福島第一原子力発電所事故により大量の放射性物質が私たちの故郷に降り注ぎ、強制的に故郷から離れざるをえなくなった。この10年で復興は着実な成果を見せ浪江町、葛尾村は除染作業が進み、一部区域を残し避難指示が解除となり、少数ではあるが住民が故郷での生活を再開した。そして、浪江町の請戸漁港においては震災後約9年ぶりに競りが再開され港に活気が戻った。また、大熊町でも一部の住民が帰還したが、大熊町、双葉町の広範囲では今もなお立入りが制限され、2022年春の避難指示解除を目指し、除染作業が進められている。交通インフラにおいては、2020年3月にはJR常磐線の不通区間の修繕工事が終了し、全線で運転を再開した。家屋の解体なども進んで復興が着実に進んでいる一方で、町の風景が変わり思い出が消えてゆき寂しい気持ちにもなる。

復興までの道のりは遠く様々な課題や問題が山積している中、困難というものは時と場所を選ばず襲いかかってくる。復興道半ばの状況下で災害とは違った「パンデミック」という新たな試練に直面している。2019年の12月に海外で新型コロナウイルスの発症報告がされ、2020年2月頃には日本で流行が始まり、4月には新型コロナウイルスが世界中で蔓延し、日本政府から緊急事態宣言が出され日本経済が1か月停滞し、東京オリンピックの開催も1年延期となった。8月に発表されたGDP成長率は新型コロナウイルスの影響で戦後最大の落ち込みとなった。有効なワクチンが未だに開発されず、with コロナ after コロナといった言葉が生まれるほどウイルスとの長期戦が予想される。

しかし、私たちに立ち止まっている時間はない。新たなまちづくり、そして低迷した経済の回復をしていくために、現状をポジティブに捉えていかなくてはならない。そして、様々な形で起こりうる困難にも冷静に状況を把握し柔軟な思考を持って対応できる人財に成長しなければならない。私たちが成長した先に夢と希望溢れる標葉地域が実現する。

【SDGs~現世代と将来世代が満足のいく世界へ~】
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable DevelopmentGoals)は2030年までに世界が成し遂げるべき社会問題を解決するための17のゴールと169のターゲットから構成された持続可能な開発目標であり、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っている。

日本青年会議所は外務省とSDGs推進におけるタイアップ宣言に署名し、日本一SDGsを推進するという目標で活動を行っている。2020年5月時点での、日本国民のSDGsの認知度は33%程であるが、内容の理解度は20%である。SDGsを認知はしているが内容の理解度は低くなる傾向にある。私たち自身のLOMにも同じ現象が起きているのではないか。

日本では近年、地球温暖化により太平洋の海面温度が上昇しその影響で強力な台風が夏から秋にかけ頻繁に発生し深刻な水害が全国各地で起きている。そして「2070年問題」これから50年後に全世界で35億人もの人口が気候変動による熱波でこれまで住み暮らしてきた場所から移住しなくてはいけない事態に陥るという試算が出ている。35億人の中にはアジアの地域も含まれている。50年後というと私たちの子供、孫世代が人生を謳歌している時である。これから起こりうる深刻な環境問題を例に取り上げたが、私たちが2030年までに目標を達成できなければ、その後さらに経済成長を阻害するほどの規制を導入しなければならなくなり、経済を支えている企業への影響は計り知れない。また、次世代に良い地球環境を残していくためにも私たち一人ひとりが「自分ごと」と捉え実行していかなければならない。企業にとってもSDGsは新事業の開発や既存事業の拡大、また、新たな人材獲得の武器にもなるなど、様々な魅力を持っている。そして、新たなまちづくりをしていく上で故郷の伝統や文化、自然環境の保護や保全もSDGsを達成するための大切な要素の一つである。まずは私たちメンバーが「自分ごと」と捉え、しっかりと知識を身に付け社業などで率先して取り入れ実践していくことが地域を巻き込んだ大胆な変革につながるのである。私たちが地域の先導者となろう。

【未来へつなぐ組織作り】

全国のLOMで会員減少や会員の高年齢化、女性の入会が乏しいなど会員拡大において様々な課題を抱えている。浪江青年会議所も2018年の1月時点での会員数は22名であったが、2020年9月には35名となり、2年で会員拡大率63%(入会者数15名)の成果を上げた。震災前の会員数まで回復し、会員減少の危機は脱したが、20代の会員の割合が20%程度であり、会員の高年齢化の解消には至っておらず、今後
また、20名台の人数に減少してしまう。そして、女性会員の入会率は11%であり、 SDGsの目標にもある女性がますます活躍する社会を達成していくためにも女性会員の入会率をさらに上げていかなければならない。JCという場で自身を磨くことにより女性がさらに活躍できる社会が実現できるのではないか。

5年後、10年後も先輩諸氏が紡いでこられた伝統ある浪江青年会議所を継続していくためにも女性や20代といった私たちの運動により良い変化をもたらす可能性のある新入会員候補者の発掘・情報収集は止めることなく継続的に行っていかなくてはならない。地域の方々に私たちの取り組みや、楽しく運動・活動をしている姿、困難な状況が起こった時も先陣を切って行動していく姿を発信していくことで、魅力が伝播し会員拡大へとつながる。地域を牽引していくリーダーとして憧れを持たれる組織となろう。
また、入会させただけでは単なる勧誘であり、会員が育ってこそ会員拡大の成功と言えるのである。新入会員が即戦力となれるようしっかりと先輩会員がフォローをしていこう。さらに、地域の若者に広くJCという自己成長の場を提供できるように運動・活動がしやすい環境を創出するための議論をし、JCの輪を広げよう。

【地域のたからを次世代へ】

私たちの住み暮らしてきた標葉地域は、東は太平洋に面し、西には阿武隈山系が連なり、夏は太平洋から涼しい浜風が吹き込み、冬は晴天の日が多く暖かく積雪も少なく、東北地方の中では最も温暖で非常に暮らしやすい土地である。秋には阿武隈山系の紅葉が美しく、高地から流れ出る河川は水質良好で鮎や鮭が遡上し、太平洋近海ではヒラメやカレイなどの水産資源も豊富である。また、300年以上続く国の伝統的工芸品にも指定されている大堀相馬焼や一千有余年続く相馬野馬追、標葉せんだん太鼓など様々な伝統・文化があり私たちの地域には先人たちから脈々と受け継がれてきた誇れるたからがある。

伝統芸能においては、震災・原発事故の直後は住民が地元を離れてしまったため存続が危ぶまれたが、今ではほとんどが再開し被災者の心を支えコミュニティ再生の一助となっている。避難生活の長期化により元の住民はそれぞれが避難先で住居を構え新しい生活が始まっている。時間の経過と共に震災の風化や、故郷から人が離れることにより地域の魅力や価値が忘れ去られてしまう。先人たちがこれまで幾多の困難を乗り越えて紡いできた伝統・文化を次世代に私たちがしっかりと継承していかなくてはならない。まちの風景、環境が変わってしまっても変わらないものも必要なのである。

私たちの誇れる故郷の伝統や文化、資源や環境を私たちが絶やすことなくサステナビリティをどう紡ぎ出すかを考え次世代に地域のたからを伝えていこう。

【地域の仲間と共にイノベーションを起こそう】

多くの地方で若者の人口流出が課題となっているが被災地域ではより深刻である。避難生活の長期化により故郷から長らく離れてしまうと関心がなくなってしまう。しかし、離れているからといって故郷への思いがなくなっているわけではない。震災当時学生だった若者が10年経ち成人し将来を自分で選択できる年齢になり、避難により地元を一旦離れたが故郷の力になりたいと考え地元に戻ってくる若者も多く存在する。私たちにはこれから新たなまちづくりをしていくという大切な使命がある。これからのまちの発展に向け、次世代を担う地域の若者を中心とした故郷を思う多くの仲間と、手と手を取り合い進めていくことが必要不可欠である。そのためには故郷への興味・関心を再燃させるきっかけを作り、地域の新たな魅力を発掘しよう。

「AI・5Gといった最新テクノロジーを駆使したまち」、「災害・パンデミックなど様々な困難にも耐えうる安心・安全なまち」、「地球環境に優しいまち」私たちには誰もが住みたいまちを実現できる可能性を秘めている。地域住民が故郷の新たなまちづくりに向け能動的な参画をしていくために、まずは、地域の仲間と共に、故郷の魅力を再認識できる事業を考え、より良いまちづくりに向けイノベーションを起こしていこう。

【効率の良い組織運営をしていくための探求心】
震災後私たちは県内外に散り散りになりながらも、各々の避難先から事業や例会・諸会議等への参加のために集まっている状況にあった。しかし、昨今の新型コロナウイルス感染拡大により人との接触、移動などが制限され、従来の運営ができない状況に陥った。災害やパンデミックといった困難な状況は大切なものが失われ悲しみを生むが、情けないことに普段気づけない事に気づかされるのである。人は困難という壁が現れた時どのように乗り越えるかを考えることで対応力や発想力が生まれる。だから人は強くなり進化し続ける。

私たちは仕事や家族、大切な人を抱えながら自己成長や地域のために日々邁進し、一人ひとりの貴重な時間を使い活動している。新型コロナウイルスの蔓延後Zoomなどの通信アプリを活用したことにより、事業・会議の開催など実際に顔を合わせなくても実施できるという成果を上げた。通信技術が発展している現代において様々なツールを活用することにより効率の良い運営につながることが証明できた。そして、リアルに集まる会員と通信アプリでの参加を2通り可能にするハイブリッド方式を活用した事業を積極的に取り入れることで参加率向上にもつながる魅力を秘めている。効率の良い組織運営を模索することはより活発な活動への発展と新しい運営方法の発見にもなる。新型コロナウイルスの影響により世間が新しい生活様式を取り入れ始めている。青年会議所もこれまでの運営方法を見直し新しい様式を構築していくことが必要なのである。効率の良い組織運営は会員だけでなく家族や社員・大切な人への負担軽減にもつながる。会員同士が実際に顔を合わせる従来通りの方法と通信アプリを駆使した方法をバランス良く活用し、会員同士の絆を保ちつつ持続可能な組織運営をしていこう。

また、近年IT社会が凄まじい勢いで発展を遂げている現代において、ネットワークを有効活用していくことにより私たちの運動・活動を一瞬で世界中へ発信することが可能なのである。昨年度行った YouTube や Facebook など様々なツールを用いての効果的な発信を継続的に行っていき、日本のみならず全世界へ私たちの取り組みを発信していこう。

【姉妹締結 第2章】

2012年度一般社団法人西宮青年会議所と国内姉妹締結を結び、本年9年目を迎える。これまでお互いの地域を行き来し、青少年育成事業や交流事業を共同で行い友情を深めてきた。9年もの年月が過ぎると2012年の姉妹締結の歴史を知る方々が卒業され、後3年後には姉妹締結時の当事者がすべて卒業を迎える。会員が入れ替わっても姉妹締結を結んだ先輩諸氏の思いを私たちがしっかりと継承し次世代へつないでいかなくてはならない。なかなか頻繁に会うことができない環境にあり、さらに、新型コロナウイルスの影響も受けたことにより、実際に顔を合わせての交流が難しい状況にあるが、これまで築いてきた友情は揺るぎないものである。これから先も同じ志を持つ青年会議所として、そして震災の厳しさを知る同志として友好関係を保ち、有事の際にはお互いがすぐ頭に思い浮かぶ存在となっていなければならないのである。来年は姉妹締結10年の節目を迎える。これまでの姉妹締結の歴史を振り返りより絆を深められる事業を考え新しい姉妹締結の流れを築いていこう。

【成長の機会】
出向とは、日本青年会議所や東北地区協議会、福島ブロック協議会など青年会議所のスケールメリットを最大限に活かすことで、普段接することのない人との出会いが刺激になり飛躍的な自己成長を促すのである。人によって出向で得られる学びの質が様々で、自分自身がどうなりたいかを意識して出向することが重要である。LOMの垣根を越え多くの仲間と出会い友情を育み、自身の能力をさらに向上させ、出向という機会で得られた経験を地域復興の力としよう。

【育LOM推進~家庭も仕事もJCも全力で!!~】
私たちは大切な家族を抱え仕事をこなしながら日々JC活動に邁進している。家族の支えは活発なJC活動へと導く原動力である。

昨年度、日本青年会議所は子育て世代の会員の誰もが結婚や出産、育児をしながらも活躍できる組織運営を推進するべく育LOM推進プロジェクトを立ち上げた。この取り組みは家族の負担を減らすだけでなく、女性の入会促進、会員拡大や退会者抑制の効果も期待でき、さらに、男性会員の積極的な育児参加により出生率の寄与にもつながる。会員一人ひとりが支えていただいている家族へ感謝の気持ちを持ち全力でJC活動に向き合える環境を構築できるよう育LOMが浸透できる取り組みをしよう。

【おわりに】

5年後の世界と私たち。
想像してみてください。
大都市もいいけど地元が好きな若者が増え、
仕事もちゃんとあって、生活もできている。
元気な高齢者をまちで見かけることが多く、
彼らをサポートするためにテクノロジーが活躍している。
人口減少や労働力の不足は価値の転換で前向きに
捉えられ、ここでもテクノロジーが上手に使われている。
経済が良くなればその悪影響を受けていた環境は、
経済成長とともに改善されるようになるだけじゃなく

環境を守るためのビジネスもたくさん生まれている。
日本を世界的な視野で見ることができて、
多様性についても理解がある。
社会問題についても敏感なだけでなく、
積極的に解決していこうと行動を起こす若者がいる。
JCという存在が、
こんな社会の土台作りのために、
全国各地で活躍している。
決して大きくは目立たない、
でも、そこには必ず居なくてはいけない存在になっている。
すべては私たちの行動次第。
ただ言うだけじゃなく、まずは自らが率先して行動することで
市民や国民を巻き込み、政治を動かし、社会を動かそう

日本JCが地域に根ざし、国を想い、世界を変える姿がそこにある。
私たちなら、必ずできる。
(2020-2024 JCI JAPAN Strategic Plan より)

経済、社会、環境において世界で多くの社会問題が存在し、解決策としてSDGsが策定されている。これまで経済を優先的に考えて進んできた結果見失っていたものが問題となり、社会のバランスが崩れ、これからの地球環境の保全もできなくなる事態を招いている。では、この問題をどのように解決していけば良いのかを考えた時、国や地方の政策・制度を変えるには時間を要する。社会問題を解決していくのに必要なことは政策・制度だけに頼るのではなく、まずは、私たち一人ひとり「他人事」という感覚をなくすことである。誰かがやるだろう。私には関係ない。その感覚が悪い方向性を生んでしまう。様々な問題に対し「他人事」を「自分ごと」と捉える意識変革を起こすことが社会問題解決への大きな役割を果たす。だからこそ私たちJCが率先して行動していき、地域を巻き込み、政治を動かし、社会を動かす。私たちなら、必ずできる。自分たちの力を信じて進んでいこう。

コメントを残す