一般社団法人浪江青年会議所

第45代 理事長

永橋 洋平

【浪江青年会議所 創立宣言文】
「我々情熱あふれる北双の青年は、互いに品性の向上に努め、自己啓発と地
域社会の産業・文化の発展をはかり、常に知性と勇気をもって隣人の幸福
と平和と友情とを願い明るく豊かな故郷を築くために行動することを誓う。」
ここに浪江青年会議所の創立を宣言する。

1980年 4月24日

【はじめに】
 今から75年前、終戦後間もない混沌とした時代の中、「新日本の再建は我々青年の仕事である」という覚悟のもと、志高き青年たちによって日本に青年会議所運動の灯がともった。それから32年後、私たちの活動エリアである浪江町・双葉町・大熊町・葛尾村(=北双地域、以下標葉地域)にも地域の未来を真剣に考え、郷土愛と情熱溢れる青年たちによって、浪江青年会議所が誕生した。
 標葉地域は東に太平洋、西には阿武隈山系を有し、夏は涼やかな浜風が吹き、冬は積雪が少ないなど一年を通して温暖な気候に恵まれた地域であり、その自然が織りなす恩恵の結晶として山と海それぞれに特産物がある。また、一千有余年続く国の重要無形民俗文化財に指定される相馬野馬追や300年以上続く伝統工芸品の大堀相馬焼をはじめとする地域に根付く伝統文化や地域の宝と呼べるものが無数に存在する地域でもある。1970年代にはオイルショックを契機に当時国策として進められていた原子力発電所を新たな産業として誘致し、日本有数の電源立地地域として更なる発展を遂げた。しかし、2011年3月11日の東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故(以下震災及び原発事故)によって故郷は一変し、数多くの命と財産が無慈悲に奪われてしまった。故郷の再建どころか、自分の家に立ち入る事すら許されない日々が長く続き、否応なしに生活再建の選択を迫られ地域を離れる決断をした方もいる。しかしながら、全国各地はもとより世界中から温かな支援の手を差し伸べて頂き、震災から13年が経過した現在では各町村で進捗状況は異なるが、復興への道筋が示されつつある。とはいえ、否応なしに避難をしなければならず、しばらくの間、無人となった街を復興するというのは至難の業であり困難を極めるであろう。しかしこれは地域を新たに創造するチャンスと捉えることもできるのではないか。国内はもとより世界中からこの標葉地域に最先端の技術やエネルギーを持った人材が集まり、可能性に満ち溢れた地域となっていることもまた事実である。我々はそんな時期にこの地域に関われるタイミングを得ている。地域に寄り添い、魅力ある標葉地域を内外に発信することで地域がより良くなるための好循環を生み出そう。地域がより良くなれば、そこに住まう我々もその恩恵を享受することができ、そうすればまた地域が良くなる。我々がその渦を巻き起こすスターターとなろう。

【歴史継承と諸先輩方への感謝、新たなる可能性への挑戦】
 青年会議所における特徴のひとつとして単年度制がある。どの年として同じものはなく、44年間、それぞれの年で地域をより良くするための運動を展開してきた。まさに不連続の連続である。その時々で何を考え、どう行動し、困難を乗り越えたのかを今一度諸先輩方から拝聴する機会を設けることで、先人の知見を知識として身につけ今後の活動に生かす糧としよう。単年度制の良いところに、組織が1 年単位で変わることによって様々な人がリーダーシップを身に付ける機会に溢れていることが挙げられるが、時のリーダーが掲げる指針はその時々の社会や組織の課題を解決することに重きを置くのでいつも同じとは限らない。それぞれの年で最適解を見つけ行動し運動を起こすための指針が理事長所信であり、中長期的な課題解決への道筋をつけるのが中期ビジョンである。我々も2019年に40周年ビジョンとして中長期的な課題解決におけるメンバーの共通認識を持つために5年間の方針を策定した。これを検証し、達成できたことや改善が必要なことを踏まえ、2029年までの今後5年間を見据えた新たなビジョンを策定し、我々が目指すべき行動指針を明確にして未来への道筋をつけよう。
 これまで歴史を紡いで頂いた諸先輩方がいたからこそ我々が活動できているのである。地域にとって、所属するメンバーにとって我々は何ができるのかを真剣に考え、それぞれが成長し、より良くなるために挑戦的なビジョンを描き、今後の行動指針を定めよう。我々は諸先輩方の背中を見て多くのことを学び、実践してきた。時に失敗をすることもあったかもしれないが、それをフォローし、より良い方向へ導いてくれたのは紛れもなく経験を重ねた諸先輩方である。その受けた恩を若手やまだ見ぬ新たなメンバーへ送ることで連綿と続いてきた恩送りを我々もまた続けていこうではないか。

【参加者視点での事業構築】
 諸大会や各地青年会議所の周年記念式典等に参加すると皆それぞれ素晴らしい設えのもと開催をされている。これは事業当日までに細部にわたるまで準備をした結果であり、関係各位の皆様のご尽力には頭が下がる思いである。これを参加者視点で考えた場合、何を学び、持ち帰れるのかという観点での設営がとても大切である。諸大会の開催意義を熟慮して準備に取り掛からなければならない。もちろん記念式典などだけではなく毎月行う例会や事業においても同じことが言える。これまで行ってきた標葉祭りやふるさと未来創造会議など多くの事業で「また来たい」という声を多数頂いており、それは参加して頂く方へのおもてなしの気持ちをもって準備設営をしたからに他ならない。私は事業というものは青年会議所という団体を知らない方へ知って頂く機会という一面があると考える。青年会議所とはどんなことを行い、所属したメンバーはどのように成長できるかを発信できる機会と捉えていこうではないか。この機会を最大限に生かすことができれば運動発信の側面だけでなく、そんな機会に恵まれるのであれば自身や身近な人を入会させたいという気持ちが芽生えるのではないか。行う事業すべてにおいて参加して頂く方々の視点に立った企画立案や設営を心がけると共に浪江青年会議所の見られ方や見せ方を意識し、「来てよかった」と思える事業を展開していこう。

【地域の未来を描こう】
 青年会議所の使命は青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供することである。社会を変えるのは人であり、人を変えるのは仲間だと私は信じている。先に述べたように標葉地域は恵まれた気候風土が織りなす四季それぞれが豊かな表情を持ち、現在では最先端技術やエネルギーを持った人材が集まり、世界中から熱い視線が注がれている状況にある。そんな人々と地域により良い変化をもたらすために協働し、地域を盛り上げるための仕掛けを作り実践に移そう。我々はこれまでふるさと未来創造会議において地域の方々と協働して新たなアクションを起こし続けてきた。            元々は震災及び原発事故で故郷を否応なしに離れなければならず、今後の選択肢を迫られた状況下で、「戻る」「戻らない」だけではなく「故郷をどう伝え繋いでいくか」ということを念頭に結成された組織体である。これまで多くの方々を巻き込み、多彩な手法によって故郷を想い行動を続けてきた。近年では地域に住まう方々と共に新たなイノベーションを巻き起こすために魅力あるコンテンツを生み出し続けている。これまでのアイデアを地域の方々と共に継続的に行うための道標を示し、自走化できる土壌を育むことで、ふるさとの未来を創造するための方策を強化していこう。
 他方、我々は標葉地域の魅力を凝縮した標葉祭りという手法を持っている。元々標葉地域にある素材のブランド化を目指し、地域内外に発信することを目的として諸先輩方が立ち上げたものである。震災及び原発事故により休止を余儀なくされたが2018年に復活を果たし、これまでそれぞれの年で特色ある「祭り」を作り上げてきた。標葉地域には素晴らしい素材が無数に存在する。すでに地域の魅力あるブランドとして成立しているもの数多くあるが、地域課題になっているものもある。それが魅力的なブランドとなれば地域にとってこれほど良いことはないのではないか。良し悪しの判断しているのはあくまで人間の主観であり、正確には素材それぞれが持つ個性である。見る角度によってその個性の輝き方は劇的に変化することもある。地域にもともとある素材を活かし、地域の新たな魅力を創造しよう。主観的ではなく客観的に地域の素材を見つめ直して地域資源として昇華させ、地域がより良くなるための具体策を示そう。

【LOMの未来を繋ごう】
 エネルギーを持った人というのは何に対しても積極的であり、周囲に好影響をもたらしてくれる。標葉地域に世界の先端技術が参集していく中で、大いなるチャンスを活かそうとこの地域を目指してくる方々も大勢いる。そんな方たちが我々の仲間として共に活動してくれたら好循環を生み出してくれるに違いない。地域に変化を起こす人は「若者・よそ者・馬鹿者」とよく言われる。我々が持っている異業種交流会を地域コミュニティ創出という視点において強化し、地域に存在する魅力あふれた人材を発掘する核として新たな仲間と出会うための機会を創造しよう。
 現在、浪江青年会議所では出身地域や職業など多種多様なバックグラウンドを持った人材が知見を持ち寄り、仕事や大切な人との時間に折り合いをつけながら青年会議所活動を通じ、地域をより良くするために行動している。組織とは多様な考えを持った個の集合体であり、大きな輪となって組織としての体系をなしていく。ひとりではできないことも組織であればできることもたくさんあり、生み出す相乗効果は計り知れない。しかしながら、私たちは何かを人に勧める際に自分が良いと思わなければ人に勧めることはしないだろう。己を成長させ、地域をより良くすることができる青年会議所活動を主体的かつ自分の経験を踏まえて具体的に人々に語れるようになろう。また、我々は自分の主観で人に対して否定的なフィルターをかけることがあるが、そもそも誰しもが成長できる潜在能力を持ち、地域を変える人材になる可能性を秘めている。それは即ち組織の可能性を広げることにもつながる。メンバーひとりひとりがフラットな視点で人と相対し、多様な人材が集い、それぞれが活動しやすい組織を目指そう。
 新入会員が活動しやすい環境を創るのは組織全体の責務でもある。とりわけ、入会に際し尽力された方は新入会員にとって近しい存在であり、後見人(メンター)としてこまめなフォローが必要不可欠である。新入会員の水先案内人として活動しやすい環境構築に尽力し、メンバーは新たな仲間を温かく迎え、組織全体で成長を期待しながら活動していく土壌を育もう。

【良き友の存在】
 震災と原発事故で明日をも知れずLOMの存続すら不透明であり、メンバー自身が被災者にもかかわらず、支援側に回らなければいけない状況下において、阪神淡路大震災を経験した一般社団法人西宮青年会議所より、被災経験者としてその気持ちを十二分に汲んだ上で温かな手を差し伸べて頂いた。そこから友好関係が始まり、2012年に姉妹締結が実現した。当時を知るメンバーはほとんどが卒業し、当時の様子を諸先輩方から伝聞するばかりになってしまったが、当時から続く絆は年々強固になっている。良き友というのは何をするでもなくそばにいて寄り添ってくれてそれだけで心が休まり落ち着く。会えば杯を交わして近況を語り合い、また頑張ろうという活力を得ることができる。ときに優しく、時には厳しく叱咤激励をしあいながらも別れ際に寂しさがこみ上げるのは、友である証明であり、その関係性は諸先輩方が築き上げて頂いたものである。これからも互いに切磋琢磨し、高め合える存在がいるということに感謝しながらまた今年も年輪を一つ重ねて絆を深めていき、互いの成長と地域の発展につなげていこうではないか。

【効果的な広報の確立】
 昨今、SNSやインターネット媒体を駆使した広報が隆盛を極めている。アナログからデジタルへと変遷をたどる中で方法論は多岐にわたって今もなお増え続けており、より新しいものを求める傾向にある。しかしながら、原理原則は変わらないままである。「誰に」「何を」「どう」伝えるのか。情報発信の大原則をしっかり見極め、相手に伝えるということにこだわって行こう。そのうえで最適な手法を組み合わせた広報活動を実践しよう。目まぐるしく変化する社会だからこそ、どんな素晴らしい内容だとしても相手の目に留まらなくては何もしていないに等しくなってしまう。例えば目的別に広報手法を変えるといった方法があってももちろんよい。手法は無数にある。相手にとっての最適解を求めて手法を検討し実践していこう。

【メンバーの成長を描こう】
 先に述べたように青年会議所は青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供することが使命である。私自身、青年会議所に入会して様々な学びを経験させて頂いたことで今日に至る。青年会議所メンバーの多くが、社会や組織で中核を担う存在であり、リーダーシップやマネジメント力を求められる。日本青年会議所にはその能力を身に付けるためのコンテンツが多数存在し、毎年多くの受講者が成長の機会を提供され、青年会議所活動だけではなく、実社会においても生かせるものが多数ある。メンバーが地域で活躍する人材となるために必要な素養を身に付けられる機会の提供を行おう。どんなに活動をしたくても青年会議所は40歳で卒業をしなければならない。限られた時間の中で何を学び、何を身に付けられるのかを参加者の立場で真剣に考え、実りある成長の機会を創造しよう。

【時代に即した組織運営】
 震災と原発事故以後、我々は避難先から諸会議や事業開催場所へ参集し活動を行っている。以前であれば10分の移動時間が1時間を超えることも多々ある。プライベートや仕事に折り合いをつけながら行うこの活動において移動時間の増大はことさら負担となることが多い。他方、コロナウイルス感染症におけるパンデミック以降はWEB会議の導入を行い、諸会議や例会などについてWEBと現地のハイブリッド開催を行うことで移動時間における負担を劇的に軽減することに成功した。このように課題を解決するための方策は創意工夫によって解決することもある。しかしながら、すべてを一挙に解決するという魔法のような方策はない。WEBと現地それぞれの良さがあってそれらをミックスすることでメンバーが活動しやすい環境を整えることが盤石な組織体制の確立につながると考える。現状に即した方策を検討し実行に移そう。

【まだ見ぬ出会いを求めて】
 青年会議所には出向というシステムがある。もちろん、浪江青年会議所内でもたくさんの出会いや経験を積むことができる。しかしながら生まれも育ちも仕事も場合によっては言語すら異なる方と出会い、自分のことを客観的に捉えることや異なる考え方に接することで急激な成長を遂げる可能性を秘めている。それは機会をつかんだものだけが得ることができるが、そのチャンスはすべてのメンバーに平等に開かれている。自己成長を求めて出向することを我々は応援し、その経験が我々の活動に新たな要素を加えてくれることを期待している。

【各種大会への参加】
 青年会議所は100を超える国と地域でそれぞれの活動を行っている。そのスケールメリットを生かして各種大会を開催しており、我々はその大会に参加する権利持っている。しかしながら権利は持っているだけでは意味をなさない。権利は行使して初めて活かせるのだ。そこには想像もつかないような規模のファンクションが数多く用意されている。現地に赴き、見て・聞いて・触れて、五感すべてで体感してほしい。そこでの経験は何物にも代えがたいものであり、まさに「百聞は一見に如かず」を感じることができる瞬間である。各種大会に参加し、多くの経験を持ち帰り実践することで標葉地域がさらに良くなるための一助としてほしい。

【結びに】
 繰り返しになるが、青年会議所は青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供することが使命である。しかしながら青年会議所に入会すれば勝手に成長するわけではなく、あくまでも機会の提供が行われるのである。その機会は決して幸運に与えられるもの、すなわちLucky ではなく、自ら掴み取るもの、すなわちOpportunities である。我々は自ら機会を掴みに行くメンバーの背中を押し、その成長を見守り、温かく迎え入れる。地域により良い変化をもたらすべく身に付けたその力を遺憾なく発揮できる場所を創り、護り、次世代へつないでいくことが責務である。
 地域により良い変化をもたらすことができればそこに住まう人々もその恩恵を享受することができる。人々が良くなれば地域はさらに良くなる。私はこの渦を創りたい。そのために青年会議所が行っていることを多くの人に知ってもらい、地域により良い変化をもたらす仲間が増えることを願ってやまない。2024年は浪江青年会議所創立45周年を迎え、さらに2025年は福島ブロック大会in浪江の主管青年会議所として、標葉地域に住まう皆様に浪江青年会議所を知ってもらう機会が連続して訪れる。このまたとない機会を活かすことで、標葉地域が更なる発展を遂げることにつながると私は信じている。夢と希望溢れる標葉地域を創造し未来へバトンを繋いでいこう。

Undaunted Action!!(アンドーンデッド アクション)
恐れずに行動を起こそう!!
United Action!!(ユナイテッド アクション)
団結して行動を起こそう!!
Unlimited Action!!(アンリミテッド アクション)
無限に行動を起こそう!!
地域がより良くなるためにUzu(渦)を起こそう
With  Ü  Action!!(ウィズ ユー アクション)
~未来を描こう!すべては仲間と故郷のために~