第41代理事長 鈴木 一成

2020年度スローガン
Make Miracle 
~夢と希望と感謝をもって~ 可能性は無限大!!

理事長所信


2011年3月11日に発災した東日本大震災、私たちの生活が一変したあの日、大規模な地震と巨大な津波により、尊い命とかけがえのない財産が失われた。さらには、福島第一原子力発電所事故(以下原発事故)により警戒区域に指定された我々の故郷は、立ち入ることすら出来ない状況となり、故郷の再建すら描く事のできない日々が長く続いた。そしてあの日から9年という長い歳月が経とうとしている今、我々の故郷にも復興という微かな光が差し始めている。
「決して忘れてはいけない事」それは震災で生きたくても生きられなかった尊い命があるという事。また震災からこれまでに計り知れないほどの支援をいただいて今があるという事。つまり私たちは今、生かされているという奇跡に感謝の心を忘れてはならない。

震災で学んだ事「当たり前の生活がどれだけ幸せであるかという事を」。

そして、誓った。先人達が築いてきた歴史や伝統、震災の経験と真実を後世へと繋ぎ、希望に満ち溢れた世界に誇れる故郷を残すために、これからの人生にどんな苦難が訪れようとも、決して屈することなく、一歩一歩力強く前に進み続ける事を。
全ては未来を担う子どもたちのために

Make Miracle
~夢と希望と感謝をもって~ 可能性は無限大!!

【はじめに】
「平成」という一つの時代が幕を閉じ「令和」の時代の幕開けと共に、2011年3月11日に発災した東日本大震災から9年目を迎える。我々の故郷は未だ復興道半であるが、ここ数年では避難指示区域の解除が進み、帰郷を願う住民の一部が故郷に帰還し、インフラ面では常磐自動車道の全線開通やJR常磐線の一部再開が実現した。生活面では災害公営住宅や再生賃貸住宅といった住まいの再建に加え、浪江町においては診療所の開設や歯科医院の再開など、少しずつではあるが復興の兆しが現れ始めている。他方、帰還率に目を向けると帰還者は震災前の人口のわずか数パーセントと著しく少数に留まっている。いつ・どういう形で叶うとも知れぬ帰還と、避難先での定住という二つの選択肢の間で、今なお明確とならない故郷再建の見通しが要因としてあげられ、故郷に夢と希望を見いだせない住民が大半を占めている。故郷の課題は未だ山積している。
いつの時代もその中心で強い志をもって邁進していたのはその地域に住まう青年であった。今だからこそ、故郷の復興や再建の飛躍的な進展をただ待つのではなく、今ある現実を真摯に受け止め、変わりゆく変化にも柔軟に対応しながら、夢と希望溢れる故郷の未来像を描き、行動しなければならないのである。
まさに故郷の再建は我々青年に課せられた使命なのである。

【産学官民一体となった故郷創生】
 東日本大震災及び原発事故により、甚大な被害を受けた標葉地域(=北双地域 浪江町・双葉町・大熊町・葛尾村)は各町村においての復興の進展状況が異なることから、抱えている問題や復興の進捗状況も様々である。加えて、長期的な避難生活の影響で帰還率の向上は見込むことができない。だからこそ標葉地域を活動エリアとしてきた浪江JCが、故郷再建を願う多くの仲間を集め、夢を語り、地域に住み暮らす誰もが限りない可能性をもって挑戦することのできる、世界に誇る故郷の未来像を描いて行こうではないか。我々はこの地域の飛躍的な復興をただ待つのではなく、青年経済人としての多様な視点や感性で地域の未来をデザインし、町村の政策に反映させることで、帰還率の向上や移住人口の増加、さらには交流人口の増加を促し、故郷復興の活性化に繋げ、故郷の未来に活力を創出する復興の推進力となろう。
我々JAYCEEが当事者意識をもって復興の先頭に立ち、産学官民が一つとなり、行動を起こしたとき、未来はきっと変わる。そして、地域が可能性で満ちたとき、我々の望む真の復興は実現できると信じている。

【魅力ある組織への進化】
 JCは20歳から40歳までと年齢制限があり、青年に成長と発展の機会を提供する団体である。昨年、異業種交流会の導入により震災後最多となる会員拡大に成功した。地域の復興を目指す我々にとって拡大は使命であり、青年世代の力の結集こそが大きなうねりとなり、地域をよりよい方向に導くのである。本年は会員拡大の新たな視点として、女性や20代といった我々の運動に変化をもたらす可能性がある会員の拡大にも力を入れていきたい。時代に即した多様性のある組織の実現はもとより、社会で活躍できる人財を育成する団体であり続けるためにも、新たなターゲットを意識した柔軟な拡大手法を取り入れ実践する。また、拡大が目的となることなく、入会した会員にはJCの目的や価値を伝え、個人の成長に直結する学びの機会を提供し、JCが持つ可能性を存分に発揮させることで、さらなる拡大の輪を広げていこうではないか。

【地域の価値創造と次世代への継承】
 私たちの活動エリアである標葉地域は阿武隈山系と太平洋に囲まれ、夏は太平洋から涼しい浜風が吹き込み過ごしやすく、冬は晴れ間が多く温暖で積雪も少ない恵まれた気候環境の地域である。震災前には地域に賑わいを見せていた各町村を代表するお祭りや伝統芸能の一部は、今もなお地元や避難先の地で続けられている。また、300年以上続く国の伝統的工芸品である大堀相馬焼も県内外の避難先で再開を果たしているほか、一千有余年続く国の重要無形民俗文化財に指定される相馬野馬追も7年ぶりに標葉地域から出陣を果たしたのだ。また、農業においては平成26年より水稲の実証栽培が開始され全量全袋検査において基準値以下の結果のもと翌年より販売を開始。漁業においては、令和2年災害復旧工事が完了となる請戸漁港に一昨年より漁船が帰還し、魚種・漁場を限定とした試験操業が開始されるなど、先人達が連綿と受け継いできた故郷の古き良き伝統と文化、資源や環境といった誇るべき地域の宝は、震災から9年の時を経て今もなお脈々と生きつづけているのだ。この事実は紛れもなく故郷を愛する想いの結晶であり、帰還を願う人々の悲痛な叫びとも感じる。先人たちが連綿と受け継いできた誇れる地域の宝がもたらす効果を最大化するためには、地域の人財育成、地域企業の活力や市民の郷土愛を醸成し、標葉地域の復興に向けた機運を高めることが必要不可欠である。我々の故郷創生や社会貢献型企業育成などの運動の成果を標葉祭りというツールを用いて最大限に発信することで、地域の存在価値を獲得し、多くの人々に求められる故郷を創造していこうではないか。そして、戦略的広報を用いて我々の運動を効果的に発信することが、やがて次世代への共感を生みだし、故郷の復興に寄与すると信じている。

【社会貢献ができる企業と人財の創出】
 2015年9月の国連サミットで採択されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)いわゆる、SDGsは2030年までに世界が成し遂げるべき社会課題を17の開発目標として掲げている。また、日本青年会議所においては、昨年1月に外務省とSDGs推進におけるタイアップ宣言に署名し、日本で一番SDGsを推進するという目標のもとSDGs推進宣言を総会で決議した。我々の行動は世界的にみればごく一部に過ぎないが、世界中に住まう人間が同じ思いを持ち、行動に変えたとき、持続可能な社会は実現可能であると信じている。今こそ、この流れにのって我々JAYCEEや地域企業が率先して、本業を通じた社会貢献に取り組み、自社の利益を生みだしつつ社会課題を解決していくことで、企業の価値を向上に繋げる行動を起こしていこう。そして、成功事例を蓄積し、導入方法の標準化を図ったロールモデルを確立し、地域企業に伝播することができれば、社会課題の解決はもとより企業価値の向上による雇用促進にも繋がり、社会と地域の発展と言う相乗効果を創出することが可能となる。我々は地域に根ざす青年経済人として、地域経済を牽引し社会課題を解決する人財となり具体的な結果に繋げていこうではないか。

【地域を牽引する人財となろう】
 JCは20歳から40歳までの限られた者にしか会員資格がない。この限られた時間にJCと出会った青年は幸運である。そして、青年には無限の可能性がある。その可能性を飛躍的に開発するためには、圧倒的な経験と一歩踏み出す勇気と覚悟、そして行動力が必要であり、それらを兼備えた青年にのみ与えられる景色が広がる。我々は、JCでしか学べない日本JCが提供する各種プログラムを通して、まだ見ぬ同士とともに知識、見識、胆識を兼ね備えた高い志と覚悟をもって結果を導く人財を育て上げよう。また、日本青年会議所運動の最大の発信の場として毎年開催されるサマーコンファレンスは、身近に日本JCの運動やスケールが実感できると同時に、我々の地域や会社に役立つ学びと築きが広がっている。言わば、人財育成と言う意味では大きな効果を有する絶好の機会を同志とともに有効的に活用しよう。

【盤石な組織体制の構築】
 LOMの会議や活動・運動を行うためには盤石な組織体制が必要であります。盤石な組織体制がなければ、報告・連絡・相談もスムーズに行われなく、LOM全体のモチベーションが下がり、運営に支障をきたします。告知や取り纏めはスピード感を持って行ない、分かりやすい資料作成や行程の説明を行うことで参加しやすい環境が生まれます。活動しやすい環境を整えることで、LOM全体のモチベーションを高め、メンバー一人ひとりがJC活動・運動に積極的になります。LOMが一枚岩となってJC活動・運動に邁進しよう。

【地域を担う人財への自己成長を求めて】
 地域の担い手として、常に前向きな視点で故郷の明るい未来を描いて行こう。震災から9年目を迎える今、着実に我々の地域は光を取り戻しつつある。過ぎてしまった過去にとらわれることなく、日々変化する現状を柔軟にとらえ、復興の担い手としての気概と覚悟、さらには多角的視点をもって歩み続けていこう。そして、JC運動を通して会社の発展、家族の繁栄に繋げていこう。JCには出向という機会がある。出向では各地から地域を背負い気概と覚悟ある同志が集い地域、国家、そして国際の諸問題解決に向き合いながらも親睦を深め、友情を育む。その凝縮した一年間はまさに圧倒的な経験であり、出向を通して経験値を飛躍的に向上させ、爆発的な自己成長をも可能とする。そして、その経験は決して無駄にはならず、これからの人生の確かな一歩となると確信している。我々は故郷復興の担い手として常に前向きな視点をもち、一人でも多くの同志が自ら率先してこの機会を志願してほしいと願っている。

【盤石な組織体制の構築と戦略的な広報の確立】
我々の運動の成果を飛躍的に向上させるには柔軟な組織運営が必要である。また、運動と運営の歯車がかみ合って初めて大きな力を生みだすことができるのである。しかし、我々にとって例会や事業をはじめ会議や委員会への参加は、今もなお避難先からであり、その移動時間は会員の負担となっている。会員は皆仕事や家族、大切な人を抱え、限られた時間のなか犠牲を払い、自己成長と地域のために日々JC運動に邁進している。会員個々の可能性を有効的且つ効果的に引き出すためにも、今一度運営方法に見直しをかけ、会員の負担軽減化と運営の効率化を検証し実行する。これは楽をするための改革ではなく、組織運営の好循環を促し、運動の効果を最大化するものである。そして、この改革が成功すれば組織力の向上に伴い、JC運動への理解度も高まることから会員拡大へもつながると信じている。また、忘れてならないのはいつも我々を支えてくれている家族や社員、大切な人に対しての感謝である。会員相互の親睦はもちろんのこと日頃から支えてくれている人に、我々の活動を報告する時間を設けよう。そして感謝を伝えよう。
人の目につかない物事は認識されることはなく、共感や反応をすることも不可能である。想像を絶するスピードで進化を遂げた現在のIT社会は、世界の人々を瞬時に繋げてくれる。無数に広がるネットワークを有効活用すれば、我々が地域で行う運動や真実を世界中に一瞬で周知することも可能なのである。我々は改めて現代の広報の持つ可能性に着目し、様々なツールが存在する中でそれらが持つ特性や効果を活かし、対象を明確に定め、効果的な発信を行おうではないか。それにより、我々が行う事業・運動をより良いものへと昇華させ、飛躍的な効果が期待できるのだ。今では誰もが手軽に扱う事の出きるこれらのツールは、使い方によっては一般人が共感と発信力のみで、たちまち数百万人ものフォロアーを集め、巨万の富を手に入れ生計を立てている時代である。我々は全ての事業を対象とし、戦略的な広報計画のもと広報を事業の結果に結びつけ存在価値を高めよう。

【未来永劫の絆と減災・防災の知識を育もう】
 過去に大規模な災害を経験された、一般社団法人西宮青年会議所より、震災で被災した被災LOMである我々に対し、多大なるご支援と温かいお心寄せのもと、姉妹締結を結ばせていただいた。以来、絆を深めるべく、互いの地域イベントや共同事業を通して、友好関係を構築してきた。近年相次ぐ大規模な自然災害は地震や噴火・豪雨や土砂災害と多様であり、全国各地で発生している。今後、多くの地域に深刻な被害をもたらすであろう自然災害の発生率が高いとされる今、震災を経験した我々としても、大規模な自然災害に対応する対処法を学ぶための防災・減災の取り組みをしていかなくてはならない。大切な命を守るためにも強い危機感を持って、救える命は少しでも救える対策や備えをしていこう。

【おわりに】
2011年3月11日あの日は、息子の1歳の誕生日。当時、沿岸部から2キロほど離れた現場にいた私は、二度に渡る大きな揺れを体感し、沿岸部から押し寄せる大津波から危機一髪免れ、家族の無事を祈りながら恐る恐る帰宅した。家族は無事だった。妻の背中に背負われた小さな息子の顔を確認したとき、体が震えて涙が止まらなかった。まさに「生かされた」と実感した瞬間である。そして翌日、原子力発電所の爆発により避難生を余儀なくされたのだ。息子は現在9歳となり、本年3月で10歳を迎える。毎年、息子の誕生日を迎えるたびに私の心の中は喜びと、悲しみと、悔しさが交錯し、複雑な思いに駆られる。息子は最初の避難先で6年、現在の避難先で3年目を迎える。転校も経験し、いつしかこの子には、胸を張って故郷と言える場所がなくなったのだ。それでも、毎日元気に精いっぱい生きている。子どもの笑顔が私にとっての生き甲斐であり、行動の源となっている。私はこの子のために、必ず故郷を取り戻すと決意したのだ。

尊い命や財産、地域コミュニティなど震災で失ったものは大きいが、この震災で得たものや気づかされたことも数多くある。それは、助け合いの精神や思いやりの心、人と人との深い絆である。そして、9年目を迎える故郷には今まさに微かではあるが希望の光が見え始めている。
今こそ、我々青年が地域の先頭に立ち、時代の変化を捉え、故郷復興に真摯に向き合い、仲間と共に気概と覚悟もって、行動を起こそうではないか。その行動こそが必ずや次世代に誇れる故郷を残し、真の日本の復興に繋がると信じている。

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