理事長所信

 

一般社団法人浪江青年会議所

第44代 理事長

横山 英輝

【はじめに】

2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0という過去に経験したことのない揺れが我々の地域を襲った。果てしなく続くと思われた揺れの後、ほどなく海が巨大な壁となって押し寄せ多くの命を飲み込み、放射性物質の恐怖は人々を追い立てた。我々の活動エリアである標葉地域(浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村)は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により、全域に避難指示が出された。寒さと余震の恐怖に顔がゆがんだ避難所、息苦しい仮設住宅での暮らし、先の見えない不安と疲労の果てに、さらに多くの命が奪われた。我々が経験した悲しみ、悔しさ、怒り、どれだけの時が経とうと、我々の心に強く刻まれている。

避難を余儀なくされ、立ち入ることも許されず、故郷が荒廃していく様子をただ見つめるしかなかったことを考えれば、原子力災害からの復興はマイナスからのスタートとされる。ゼロからの復旧を図る自然災害と異なり、原発事故は途方もない苦しみを我々に強いた。思い出のふるさとは荒れ果て、家族や地域コミュニティが分断された。

震災から12年。標葉地域の三町一村では除染やインフラ整備が進み、徐々に避難指示が解除され、我々は一歩ずつふるさとを取り戻してきた。標葉地域では除染やインフラ整備が進み、ごく普通の生活をし、子どもたちの元気な姿も帰ってきた。全町避難が唯一続いていた双葉町では昨年8月、JR双葉駅周辺の一部で避難指示が解除されたことですべての町村で居住が可能になりいよいよ標葉地域の復興の全体像が見えてきた。

しかしながら未だ様々な課題は大小問わず山積している。これから地域のために我々に出来ることを考えれば、きっと一人ひとりが違う答えを持っているだろう。目指すゴールは同じだが、その過程には一人ひとりの物語があり、そこで得た経験と成長がやがて地域発展の糧になるだろう。限られた時間の中で何をどうすべきか。地域住民やかけがえのない大切な人を思い浮かべれば、未来への展望が見え、自ずと道は拓けるだろう。一人ひとりが描く夢と未来が持続可能な地域へ繋がっている。さあ共に明るい豊かな社会への実現を目指し歩んでいこう。

【意義と目的】

現在、青年会議所は全国で684の青年会議所が存在し、約26,000名のメンバーで構成されている。世界に目を向ければ100カ国以上、メンバーはおよそ20万人、OBは250万人以上という組織になっている。 

青年会議所が全世界で共通して行うセレモニーは厳粛な雰囲気でいて正に「凛」という言葉が相応しい。職業、年齢、環境、立場、考え方などが異なる多種多様なメンバーが、JC運動での理念・目的・価値観を共有し、連帯感をもって運動に取り組むための意識統一を図ることが目的とされている。

「JCI Creed」、「JCI Mission」、「JCI Vision」、「JC宣言文」、「綱領唱和」

我々は普段唱和しているこれらの意味を理解したうえで活動に取り組めているだろうか。一人ひとりの考え方や解釈は様々だろう。

多様な価値観が混在し、現代において個性は光とされる。一人ひとりが自分に落とし込み、目的と意義を持って活動することで、独自にJC運動への価値を見出してほしい。その上で互いが認め合い、共に切磋琢磨できる環境の構築が互いを高め合えるきっかけになることで向上心溢れ自発的な参画への道筋となるだろう。これらを通し自己成長で得た力は地域貢献への一助となり、持続可能な地域を実現するための糧となるだろう。

【多様性を持つ持続可能な団体へ】

地域には様々な社会課題が存在する。コロナ禍、教育、子育て、働き方など多くのそれらが山積している中で偏った思考では社会課題を解決することは困難であり、多様な考え方を受け入れる組織が正とされる気風がある。

多様な考え方が集まる組織の利点として、それぞれ違った素質を持つ人たちが集まることで、より多くの発想が生まれやすくなり、活発な議論が行われることが期待され、これらを総じてより良い組織に成長し持続可能な組織への変革を遂げる要因になると考えられる。また我々青年会議所の「JCI Creed」にも同様に「人間の個性はこの世の至宝である」と謳っている。

多様な社会課題に直面する時代だからこそ多面的な視点から解決に向かう考えを持った組織にならなくてはならない。

またこのような組織へ成長を遂げるためには、あらゆるシーンでの会員拡大推進の発信が必要であり、一人ひとりが胸の内から組織の魅力を伝えることで、組織の輝きは倍増するだろう。そしていつしか様々な人財から自発的な入会の申し出や、会社からの推薦、メンバーや先輩諸兄の声を通じ、今までにない人財が集う魅力ある組織へさらなる発展を遂げ、輝く個性が調和する持続可能な未来への大きな一歩となるだろう。

【地域に無くてはならない存在へ】

浪江青年会議所は地域に必要とされている団体になっているだろうか。

我々の活動は地域住民の意識や行動に変化をもたらしてこそ成果と言えるのではないだろうか。地域住民に我々がどのような事業を企画、実施し何を伝えたいのか。これらを認識されなければ地域住民にとって地域に必要とされる存在になるにはまだまだ道半ばだろう。SNS、ホームページ、インターネットを通じ様々な情報を発信することが当たり前になった現代において、広報活動を計画的かつ戦略的に実施することが効果的ではないだろうか。我々の想いや考えの情報提供を的確に発信することが地域住民への興味や希望に繋がり共感へと変わり、地域から必要とされる団体を目指そう。

【震災の教訓】

東日本大震災以降、毎年必ずと言っていいほど目を覆いたくなるような報道を目にする。地震、台風、大雨、洪水などによる自然災害が発生し、近い将来には高い確率での大地震の発生も予測されている。これらの脅威から大切な人の命を守るために、誰もが災害に対峙する可能性があるという認識を持つことは必要不可欠である。

この12年という時の中で、標葉地域では震災の教訓とし震災遺構や震災伝承館などのアーカイブ施設の整備が進み、震災の経験を発信する環境が生まれ、国内のみならず世界中の方々へ震災の記憶が共有されている。しかしながらその一方で年月が経つにつれ、当時を知る方々の記憶や関心は薄れていき、震災を経験していない世代の増加などによる記憶の風化が懸念されている。

当たり前だった幸せが、当たり前ではなくなることが想像できるだろうか。様々な災害の中には経験、知識、準備不足が原因で守れたはずの命も守れなかった事例も存在するだろう。「大丈夫だろう」そう思った時には既に起きるかもしれない想定が出来ているはずだ。決して他人事とは思わず当時の出来事、あの時の気持ちを今一度思い返してほしい。地域住民が心から安全安心に暮らしを実現するために、まずは我々が震災の教訓を踏まえ災害の危険を知り、正しい知識を身につけ、様々な災害への対応力や防災・減災意識の向上を伝播することが隣人を守る第一歩だろう。東日本大震災と同じ悲しみを繰り返さないためにも、震災を経験していない世代やこれから生まれてくる子どもたちに震災の記憶や教訓を風化させることなく伝え続けていくことが、震災を目の当たりにした我々の使命ではないだろうか。本当に辛いときに支え合った当時の気持ちを胸に標葉地域を安全で安心して住み暮らせる地域への架け橋となろう。

【魅力発信まち興し】

我々浪江青年会議所は創立以来、様々な地域課題に向き合い、その都度課題解決や地域発展のために、持てる知識と手法を捻出し、地域をより良くするために地域住民の方々と共に歩み続けている。テレビや新聞といったマスメディアによる発信は地域の大事な情報源である。住み暮らす地域住民の貴重な声も地域に寄り添った真実の言明であり課題は無数に存在している。我々JCに出来ることは何なのか。目の前の問題を解決することも大事だが、潜在的な問題を探り出し、地域がより良くなるために活動することも我々JCの役目の一つだろう。

震災発災翌年の2012年に継続事業として立ち上げた「ふるさと未来創造会議」は標葉に心を寄せるメンバーで構成され、地域の課題に向き合い共に解決していくものである。皆で考える課題は大小様々あり、あらためて地域の学びになるだけではなく、新しい魅力の発見・創出の機会ともなる。課題解決はもとよりぜひ魅力発信の機会の場として皆には活用し地域活性化へ繋げて欲しい。また同様に浪江青年会議所の主要事業となった「標葉祭り」は地域の宝である伝統文化の継承と地域の魅力発信による交流人口増加を図るものとなっている。震災後に一度休止したものの、今年も開催に至れば7度目を果たそうとしている。三町一村の魅力の最大の発信の場であり、官民合同の催しとして開催され続け、地域住民に広く親しまれる祭りへと成長した。今の時代だからこそ我々が持つ組織力と他団体等との連携により、地域住民さらには世界へ地域の魅力を発信し、交流を促進させることが地域活性化へと繋がるのではないだろうか。また一方でコロナ禍が与えた社会的影響によりニューノーマル時代が到来している。様々な分野で考えもつかなかったことが当たり前となり、オンラインでの会議や研修、在宅勤務、インターネットライブなど経済活動や生活様式などあらゆる場面においてデジタル化が加速し続けている。進化し続ける世の中を常に追い続けることは、先を見据えて行動する我々JCにとっても大事な責務である。その上で我々は、インターネットなどの世界と繋がる先進技術と青年ならではの柔軟な発想を織り交ぜることによって地域がより良くなるための足掛かりを提示し、新たな切り口での魅力発信を行うことだと考えている。これまでの経験と知恵を結集し新たな価値への挑戦と形成する力をもって持続可能な未来を創造しよう。

【隣人の幸福】

「常に知性と勇気をもって隣人の幸福と平和と友情とを願い明るく豊かな故郷を築くために行動することを誓う。」 (浪江青年会議所創立宣言文一部抜粋)

44年という時を経ても尚、先人たちが築いた想いが我々へ脈々と受け継がれている。いつの時代も人を想う気持ちは変わらない。JC活動を日々支えてくれている家族や職場、大切な方々からの活動への理解や応援は我々が運動を展開していくうえでこの上ない原動力だ。しかしながら家庭や仕事、JCを両立させるのは並大抵のことではないことも私自身痛感している。ただ一番辛いのは自分ではなく、いつも笑顔で支えてくれる人たちだということを忘れないで欲しい。常に感謝の気持ちを忘れずにJC活動に取り組もう。そして培った知恵や力をもって日々恩返しをし続けよう。

【機会の提供】

JCにはLOMでの活動や事業以外にも「出向」という県内、東北地区、全国、世界の生い立ちやこれまでの経験、更には国籍や人種まで自分と全く違う人生を歩んできたメンバーと出会える「機会の提供」が存在している。地域によって違う多様な課題、地域貢献、優れた人財との出会いなど、多くの成長の機会が詰まったチャンスが全員に与えられる。出会ったことのない広い世界で得た知識や経験は多くの方の経験は今後の人生を大きく変える糧となりえるかもしれない。個々の成長が地域貢献に繋がっている。その先に隣人の幸福あるということを想い、限られた時間の中で成長の機会を掴んで欲しい。

【姉妹締結10周年を終えて】

2012年、一般社団法人西宮青年会議所と国内締結を結びその絆は途切れることなく10周年を迎え、昨年10月に姉妹締結10周年記念事業・記念式典を開催された。今もこうして見えない絆で固く結ばれ続けているのは先輩諸氏が大切に歴史を紡いでこられたから。我々は歴史を振り返りここまでに至るきっかけや経緯に感銘を受け、そしてこれからも歴史は繋がれていく。時勢が目まぐるしく変化する中で、会員相互の信頼と友情を深め、今ここで姉妹交流の重要性と必要性を再認識する機会の構築が必要である。今後は時代を見据えた新しい交流の仕方などを模索しながら、お互いの友好を築き上げよう。これまで10年間で培ってきた友情と信頼の絆をより一層深め、さらには新しい広がりを生み出せるよう共に交流の輪を広げ、事業などを通し10年に渡り構築された友好関係をより強固なパートナーシップとし次世代へ繋いでいこう。

【創立45周年へ向けて】

誇り高き志を持った先駆者から脈々と歴史は受け継がれ、全国で662番目に設立された浪江青年会議所は2024年に創立45周年を迎えようとしている。本年はその創立45周年の前年度として、創立40周年時に策定された40周年中長期ビジョンに「成長!継承!創造!~伝統を紡ぎ新たな希望の種を育もう~」と掲げたテーマをもとにした5年間の活動を振り返り、検証を行い我々の進むべき方向性を明確にすることで、新たな歴史を紡いでいくための起点とし創立45周年への新たな道標を示す必要がある。浪江青年会議所がここまで歩み続けて現在存在しているのは、これまで歴史を築き上げてこられた先輩諸氏が、大切にふるさとを育み、丁寧に歴史を紡ぎ、次世代に繋いでこられたからである。これから我々は浪江青年会議所の発展のためにも、今一度先輩諸氏の運動の軌跡を認識し紐解き、理解をした上で今後の展望を見定め、これまで築き上げてきたパートナーとの信頼をより強固なものにし、隣人の幸福を願い、皆が一丸となって5年後10年後と続く明るい豊かな社会へのレールを描いていこう。

【結びに】

我々の目指す明るい豊かな社会とは。それは誰もが自分の人生を自分で決定することが出来る「多様性」があり、標葉地域に住み暮らす地域住民や大切な方々、未来を担う子どもたちがずっとこの町に住み続けたいと思える「持続可能性」のある地域が我々の目指す明るい豊かな社会ではないだろうか。財政的に豊かで潤っていることばかりではなく、皆に愛され夢と希望に満ち溢れた想いのある地域だからこそ輝く未来がある。

そのためには我々浪江青年会議所が地域に寄り添った課題解決に努め持続可能な地域を目指し、基盤となる土台と仕組み作りを模索しながら夢へ繋いでいかなければならない。

これからもふるさとにどんな困難が起き、どんなに姿かたちが変わろうと、ふるさとを愛する気持ちは変わらない。我々が子どもの時にこの地で生まれ育ち幸せだったように、同じようにふるさとを誇りに思ってもらうためにも、子どもたちが標葉地域に生まれてよかった、これが私たちのふるさとだと自慢のできる地域を目指し、明るい豊かな社会に向けて共に手を取り合い歩んでいこう。

~隣人の幸福を願えば自ずと道は拓ける~

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